「少子高齢化が進む日本国内だけでは、自社が求めるような優秀なエンジニアや技術職の採用が難しくなってきた」
「海外のトップクラスの大学に在籍する優秀なグローバル人材が欲しいが、接点を作るきっかけがない」
このような深刻な人材獲得の課題に直面している経営層や採用担当者の皆様に向けて、近年注目が集まっているのが海外の現役大学生を日本に呼び寄せる「インターンシップ」の活用です。しかし、いざ具体的な手続きを調べようとすると、複雑な出入国管理制度やビザの手続きという厚い壁に阻まれてしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、海外インターン生の受け入れにおける在留資格(ビザ)である「特定活動9号」について、絶対に外せない「4つの重要条件」を中心に、専門家である行政書士の視点から詳細に解説していきます。
そもそもインターンシップビザ「特定活動9号」とは?
日本国内で外国人が働くための在留資格(ビザ)には多種多様な種類がありますが、海外の大学に在籍したまま、日本の企業で数ヶ月から最長1年間の実務経験を積むために用意されているのが「特定活動(告示9号)」という在留資格です。
この制度を一言で表すならば、外国人が日本に単なる「出稼ぎ」や「アルバイト」として労働しに来るのではなく、あくまで「海外の大学における教育課程の公式な一部」として、日本の企業で実習(インターンシップ)を行うための仕組みです。ここがすべての土台となります。
この特定活動9号は、その名の通り「海外の大学に籍を置いている現役の学生」だけを対象としています。そのため、「すでに大学を卒業してしまった求職者」や、「卒業後に日本での就職先を探している段階の人」は、どれほど優秀であってもこの制度を利用することはできません。卒業生を呼び寄せる場合は、「技術・人文知識・国際業務」といった通常の就労ビザの手続きが必要になるため、採用選考の初期段階で必ず「現在の在籍状況」を確認する必要があります。
入管審査を突破する「4つの重要条件」の徹底深掘り
入国管理局にビザの申請を行う際、審査官が提出された書類を厳しくチェックする4つのポイントがあります。
|
1単位認定の厳格な証明
インターンが大学の正式な教育課程であり、卒業に必要な単位として認定される必要があります。
|
2大学と企業間の直接協定
学生個人との契約ではなく、日本企業と海外大学の「二者間」で正式な書面契約を交わします。
|
|
3日本人と同等以上の報酬
有償インターンのため、日本人と同等額以上の報酬支払いが必須(無償は別ビザになります)。
|
4期間制限のダブルルール
最長1年以内、かつ在籍大学の修業年限の半分を超えない制限があります。
|
条件①:【最重要ポイント】大学による「単位認定」の証拠資料
実務において、最も重要な審査の鍵となるのが、この「単位認定」の証明です。特定活動9号を申請するにあたっては、そのインターンシップへの参加が「大学の卒業単位として認められるものであること」を客観的に証明しなければなりません。
具体的には、海外の大学側が公式に発行する以下のような書類が必要となります。
- 単位認定証明書: 当該インターンシップを修了することで、何単位が授与されるかが明記された書類
- 教育課程の一部と認める証明書: 単位数が直接固定されていなくても、その実習が大学の正規カリキュラムに組み込まれていることを証明する書類
「現地の学生が夏休みに自主的に日本へ行ってインターンをしたいと言っている」というだけのケースでは、大学の公式な教育課程とは認められないため、このビザの許可は絶対に下りません。事前の確認として、必ず相手の大学に「インターンシップに対する単位認定の枠組み(インターンシッププログラム)が存在するか」を問い合わせる必要があります。
条件②:【個人契約は不可】日本企業と海外大学との「インターンシップ協定書」
2つ目の条件は、受け入れ先となる日本の企業と、海外の大学との間で直接、正式な提携契約を結ぶことです。入管の審査では、個人間の約束ではなく、「日本の法人」と「海外の教育機関」という二者間の公式な組織間契約が結ばれているかどうかが厳格にチェックされます。
協定書の中には、インターンシップの目的、実習内容、指導体制、トラブル発生時の責任の所在、そして双方の協力義務などをかっちりと明文化して盛り込む必要があります。海外の大学との契約締結には時間がかかることが多いため、ビザ申請のスケジュールから逆算して、早期に英文の協定書案(MOU:Memorandum of Understandingなど)を用意して交渉を始めることが成功のポイントです。
条件③:【明確な金額根拠が必要】「報酬の支払い」と日本人と同等額以上の保証
報酬を支払うにあたって最も重要な点は、「日本人が同じ仕事(実務)に従事した場合と同等額以上でなければならない」という点です。例えば、自社で新卒の日本人エンジニアを時給1,300円や月給25万円で採用している場合、海外からのインターン生だからといって「物価の安い国から来る学生だから低くてもいいだろう」といった設定をすることはできません。入管へのビザ申請時には、自社の日本人従業員の給与規定や、同種の業務を行っている従業員の賃金台帳の提出を求められることもあります。適切な報酬設計は、法令遵守(コンプライアンス)の観点からも絶対に妥協できないポイントです。なお、無報酬で行う場合は、まったく別の「文化活動」ビザになります。
条件④:【ダブルルールに注意】期間制限
滞在期間に関する制限には、以下の2つのルールが存在します。
- 最長1年という絶対的な条件: 特定活動9号で日本に在留できる期間は、どのような理由があっても通算で「最長1年間」が上限となります。
- 修業年限の半分を超えないというバランスのルール: 学生が通っている大学の卒業までに必要な全在学期間の半分を超えてはならないという規定です。例えば、一般的な4年制大学の学生であれば、その半分である「2年間」が上限となるため、最長ルールの1年は問題なくクリアできます。しかし、3年制の大学であれば「1年6ヶ月」が上限となります。
残りの学生生活とのバランスも考慮されるため、事前にしっかりとスケジュールを組む必要があります。
絶対に踏んではならない「落とし穴」
ここまで4つの条件を詳しく見てきましたが、最も警戒すべき「落とし穴」は、「その実習内容が本当に実習(インターンシップ)なのか」、それとも「単なる労働力の補填(単純労働)」なのかという点です。人手不足の穴埋めとして、工場のライン作業や単純なデータ入力だけを日々繰り返させるようなケースは、制度の目的外利用とみなされ厳しく処分される対象となります。特定活動9号のビザを申請する際には、詳細な「実習計画書(カリキュラム)」の提出が必要です。あくまで「教育の一環としての実習」であることを理解しておく必要があります。
実務の盲点:相手大学の「学位授与権」の確認
特定活動9号の対象となるのは、原則として学士以上の学位(Bachelor’s degree以上)を授与する資格を持つ正規の大学・大学院です。海外には、名称に「University」や「College」と付いていても、日本の制度上は「専門学校」や「無認可のスクール」に該当する機関が多数存在します。特定活動9号の対象となるのは、原則として「学士以上の学位(Bachelor’s degree以上)」を授与する資格を持つ正規の大学・大学院です。ここの確認を怠ると、すべての前提条件が崩れてしまうため、事前に学生から在籍証明書を取り寄せ確認を行うことが必須です。
実行への第一歩
皆様がこの記事を読み終わった後に取るべき最初のアクションは、**「提携候補となる海外大学のカリキュラムや、過去のインターンシップ実績を確認すること」**です。そもそもその大学に、単位認定の枠組みが存在するかどうか、すべてはそこからスタートします。
優秀な海外の学生との出会いは、企業の組織文化を活性化させ、未来のグローバル競争力を劇的に広げてくれる最高の投資となります。
海外インターンシップのビザ申請は当事務所へ
「自社の実習計画が『単純労働』とみなされないか不安」「海外の大学に提出する協定書の文面作成で迷っている」「英文の単位認定関係書類の精査をお願いしたい」など、実務への移行段階では専門的な法判断が求められる場面が多々あります。
行政書士事務所realizeでは、特定活動9号をはじめとする外国人の在留資格申請に特化し、企業のグローバル人材獲得を確実な法務コンプライアンスでバックアップいたします。本格的に動き出す前に、まずはお気軽にご相談ください。
行政書士事務所realize(リアライズ)
お問い合わせは以下からどうぞ



